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感想文

彼の地2と、ハンダと、私


2年前の2月と3月に行われた、北九州芸術劇場のプロデュース公演「彼の地2~逢いたいひ、と。」に照明スタッフとして関わっていたのですが、今思い出しても何度振り返っても、私と「彼の地2」をつなぐもの、それはハンダです。北九州、東京、豊橋の3都市ツアー。入社4年目の私と、ベテラン先輩のプランナーと、入社1年目の後輩と回ったツアー。良い事も悪い事も、笑顔も涙も、トラブルも、ありました。そしてとにかくハンダ付けをしていました。大量の。

北九州を舞台に描かれた「彼の地2」。舞台奥には、若戸大橋、工場地帯の煙突、そして閉園となったスペースワールドの遠見パネルが立っていました。

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岩田さん(照明プランナー)が、遠見パネルに電飾を付けると言いました。スペースワールドのジェットコースターのパネルに、ジェットコースターが走っているような電飾、一周ぐるっっと回るジェットコースターの電飾。それになり得る電飾キットをネットで購入して、スペースワールドのジェットコースターと煙突の電飾を作成すべく、私のハンダ生活がスタートしました。想像を絶する基盤の多さ、ハンダ付けの複雑さ、に半分狂いながらも、私はハンダと共に、「彼の地2~逢いたいひ、と。」を駆け抜けました。

ツアー最終地の豊橋で、電飾の付いた遠見パネルを処分する瞬間にも立ち会いました。せめて電飾だけでも…とは言い出せないほどゴリゴリにパネルに固定された電飾は、他のセットの大道具と共に、廃棄されていきました。もうこの世にあの電飾はありません。けれども、電飾が出来上がるまでの、ハンダとの、日々は、いつまでも残り続けるで、しょう。櫻井、翔。

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岩田さんは小屋入り前になると稽古場で稽古を見てプランを考える日々なので、基本的には私と、後輩のスタイル良すぎ脚長すぎギャル、三好と2人でハンダを付けていたのですが、三好は若者なので別の現場に借り出される事も多く、基本的には孤独な作業だったと記憶されています。具体的にどんな作業をしていたのかはもうあまり覚えていませんが、基盤を作ってLEDをつける、スイッチをつけて、とか何かもう色んなことをする中で、その作業時間の大半はハンダが占めておりました。ほぼ毎日LINEでやり取りをしている友人とのトークて「ハンダ」と検索をかけると、私がいかにハンダに狂っていたかを思い出せます。

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※ヤヤヤヤヤヤとは、「やめれやめれwww笑やめれやめれwww笑やめれやめれwww笑やめれやめれwww笑」の事です。省略してます。そういう時期もあったね。

このツアーは本当に、作品含め、本番中も何もかも、人との繋がりも、もうかけがえのない、とっても大切な記憶、大切な作品、なのですが、どうしても私には、あのハンダの独特の匂い、照明準備室の大きなテーブルに乗りきらないほどの基盤とケーブル、ハンダハンダハンダハンダハンダハンダ。ハンダなのです。人間3周分のハンダ作業。もう、そればかりなのです。

「彼の地2~逢いたいひ、と」のオンライン読み合わせ?が行われるとの事で懐かしいな~~と思って、もう2年か~、のあとにすぐ、ハンダ付けたな~と。

人それぞれの彼の地があります。

私の彼の地は、ハンダに、あり。